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帯刀・翔護の日常や、過去を少しずつ書いていこうと思います。
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やはり更新するものはIFでした(滝汗

まぁ、気にしたら負けですかね?



【20XX年 封鎖特区 横浜】

 始まりにして終わりの地、鎌倉。
 世界結界はもはや意味をなさず、
 敵性来訪者の来襲、そしてシルバーレインによるゴーストの発生により荒廃した地。
 そのすぐ隣に存在する特区。
 終末のお隣さん、とも揶揄されるもう一つの封鎖特区。
【封鎖特区・横浜】
 この物語は、世界の終りの一歩手前で紡がれる。
 それは少女の悪夢の少し前の話。



―――特区外の商店街



卒業してから帯刀は世界各地のゴーストタウンを回っていた。
ヒカルと別れるのは身を裂かれるような思いだったが、次に帰ってきた時に何があっても彼女を守れるようになる為に、別れるのが辛くとも行かなくてはならなかった。
世界の闇はやはり暗く、深く、澱んでいて濁っていて見るに耐えない物だったが、彼女を思い出すだけでそんな世界すらも愛しく感じられた。
その日も廃墟を一つ攻略し終え、数ヶ月ぶりに近くの町にラブホテルの一室でも借りて寝ようと思い、夕暮れの歓楽街に向かう途中。


『…との事ですので、特区横浜は今、混乱している状態のようです。特区横浜で支援活動をしていた元銀誓館学園の生徒月宮・ヒカルが主犯となり行われた今回の事件は被害を出す前に政府の部隊に鎮圧された模様です。』


電気店の店頭に置いてあったテレビ。
そこから流れてくる情報は彼の思考を停止させるには十分すぎるないようだった。
特区横浜。
そこは彼女の運営している寮もある立ち入り禁止区域だ。
あと少し強くなれば戻る予定だった寮。
そこが今、どうなっているって?


『それにしても今井さん、今回の事件はなぜ起きたのでしょうね?』
『政府からの発表では反逆罪としてとの事ですが、本当にそうだったのかなんて誰にもわかりっこないです。その上、この館に住んでいる人々はまだ20にもなっていない子供ばかりで、特区内で力のない一般人を助けているという情報が入っています。そんな子達を政府が全員殺さなければならないような反逆を何故起こさなければならないのか。私はそこに注目しまして…。』


殺された?
全員、殺された?
コロサレタダッテ?
急激に血が引いていくのを感じながら視線をテレビに釘付けたまま微動だに出来ない翔護。
その呪縛はクラクションの音で解き放たれた。
我に返り、目にも留まらぬ勢いで電気屋の親父に詰め寄る。


「この事件はいつ起きたのですか!生存者は!?ヒカル様は生きているのか!?」


途中から口調が昔に戻っているがそんな事は気にしていられないとばかりに電気屋の親父の胸倉を掴み揺さぶる。
いきなりの事に目を白黒させながら首を揺さぶられる店主。


「わ、わかった。教える、教えるから揺さぶらないでくれ。」


胸倉は掴んだままだが揺さぶりだけを収める。


「そ、その事件は3ヶ月くらいまえの話だ。事件が起こった当時はかなり世論が騒いだんだぜ。政府の横暴だとか、色々言われてたらしい。なんていったって20歳前の子供を皆殺しだからな。」


息も絶え絶えで言う男の言葉に呆然となり、手の力が抜ける。
拘束が無くなりゼィゼィと息をした店主は伸びた服を直した。


「そ、そんな…まさか。」


元から血色がそれほど良くなかった帯刀は更に顔を青ざめさせながらよろけた。
そんな、馬鹿な。
あの方が殺されるなんて…そんな…そんな。

「あんた、知り合いか何かだったのかい?そりゃ残念だったね。遠くに異端なら仕方が無いさ。なんせ葬式も出来なかったんだからな。殺された子供の家族達は今もデモ活動を続けているよ。」
「…葬式が出来なかった?」


呆然としていた帯刀は怪訝な目で店主を睨む。


「遺体は全て政府が回収しちまってね。噂じゃ人体実験をしてるだの死んだ体をホルマリン漬けにして調べられてるだの、非現実的な噂があちこちで流れちまってる。まぁ、その性で今じゃ国民の心は完璧政府から離れちまってるよ。支持率がこの間ついに10%切ったって話だぜ?」


カイシュウ?ホルマリンヅケ?
理解できない単語が耳に入ってきた。
ヒカル様の体を政府が回収して、ホルマリン漬けだと!?
あの方の体を…調べる!?
白魚のような美しい肌を
桜貝のような薄桃色の瑞々しい唇を
絹のような手触りの白銀の髪を
マシュマロのように柔らかく甘い香りのする体を
汚水しか出ない雑巾のような奴らが触るだと!?
あの方を殺したくせにその薄汚れた手で触れる!?
そんな事許すものか!
たとえ神が許したとしても俺が絶対許さねぇ!!
目が怒りで染まっていき、手を握り締めすぎた為充血していく。


「…親父、政府が回収したって言ったよな。」
「お、おぅ。」
「どこに回収したのかは知らねぇのか?」


店主は男の並々ならない様子に思わず後ずさりする。
ブツブツと何かを呟いている帯刀は店主から見れば異常な状態にしか見えない。


「し、知らないぜ。俺はインターネットが苦手なんだ。」


あからさまに舌打ちされるが、怒りは感じていない様子だ。
むしろこのままではこの男に殺されるのではないかという恐れが体を包み込んでいる。
帯刀が視線を店主に向ける。
蛇に睨まれた蛙の状態の店主。
一歩、二歩、三歩
店主の前に帯刀がしゃがむ。


「おい、親父。」
「ヒッ。」


声をかけられ身が竦み、意識が遠のきそうになる。
歯がカチカチと鳴っているが、帯刀はそんな店主の様子をまるで無視して口を開く。
死刑宣告をされる囚人のような気分になる店主。
青ざめた表情で帯刀の言葉を待っている。


「この店においてある一番使いやすいノートパソコン1台と携帯を1台用意しろ。」
「…………は?」


それからしばらく店主は放心して微動だにしなかった。





放心している店主から携帯とノートパソコンを買うとホテルから電話をかける。


『やっほー、風我ちゃんでーす。どちら様かしら?』


相変わらずの能天気な声に思わずこめかみが引くつく。


「私です。帯刀翔護です。」
『やだ翔護ちゃん。久しぶりー元気してた?』
「風我、其方の情報で何か掴んでいませんか?」
『……ヒカルちゃんの事ね。こっちは今、調べているけど特区横浜の中に存在している実験施設のどれかまではわかったんだけどどこに回収されたかまでは確定できないわ。』


風我の情報網でも掴むのが難しい極秘施設…。
頭をよぎる愛しい少女の顔に、思わず唇を噛んでしまう。


『でも、良い情報もいくつかはあるわ。』
「良い情報?なんですか?」
『1つ、確定はしてないけどいくつかの施設に絞ってある。2つ、特区の内部に入る手はずは今の所順調だから上手くいけばあと2~3ヶ月では入れるわ。それまでに今よりも更に強くなっててね。3つ、これが一番翔護ちゃんには良い情報ね。……ヒカルちゃんはまだ、生きてるわ。』
「それは…本当ですか?」


震える声で風我に聞く帯刀。


「えぇ、間違いないわ。あの子は生きてる。どんな状態になってるかは予測つかないけど、とりあえず生きているわ。確かな情報よ。」


生きている。
あの方はまだ生きている。
また私を見てもらえる。
また言葉を交わせる。
ともに歩く事が出来る。
ならば、早く救い出さなければ。
出来る限り人数を集めて、助けなければ。


「風我、特区に入る時に、何人まで入れますか?」
『極秘に入るなら…そうね、アタシと翔護ちゃんを含めて3~4人が一度に入れる限度だと思うわ。後、此処にレイン君も入るから実質ヒカルちゃん救出には4人が限度だと思う。雷覇ちゃんは海外に居るから無理だし…。』


あの男だ、忌々しいがあの男なら実力もあるしヒカル様を好きだった。


「天野夏優に連絡を入れてください。」
『…あら、ちょっと意外ね。恋敵に助けを求めるなんて。』
「ヒカル様の一大事で一番近くに居て駆けつけれる人間は奴しか居ません。私は、奴を過小評価したことはありません。それに、助ける人数は多ければ多いほど良い。…個人的には死んでも助けを求めたくない相手ですけどね。」


最後の呟きをしっかりと聞き取ったようで向こうで大笑いされた。
舌打ちをしながら連絡を入れるようにと大声で言うと荒々しく通話終了ボタンを押した。
まだ学生だった頃に貰った手作りのシルバーブレスレッドをもう片方の手で撫でながら窓から月を見上げる。


「ヒカル様、申し訳ありません。今しばらくお待ちください。必ずこの帯刀翔護が助けに行きます。…忌々しいですが、天野夏優と共に。」
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